「尺八の豊潤な響き味わって」 デビュー15周年、藤原道山

毎日新聞
邦楽の枠を飛び越えて活躍する尺八演奏家藤原道山が3月26日、大阪市中央区いずみホールで演奏会を開く。藤原のほかに東西の演奏家8人が集まり、ソロから九重奏まで尺八の重厚で温かな響きを堪能できる。


 東京芸術大大学院を修了し、2001年にCDデビューした。シンセサイザー冨田勲ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団メンバーとの共演のほか、昨年話題になった「スーパー歌舞伎2 ワンピース」の舞台音楽を手がけるなど、幅広く活動している。

 今年、デビュー15周年を迎えた。「デビュー当時は尺八の演奏会というだけで敬遠された。『尺八の藤原道山』というと『どんなおじいさんかと思った』と言われたり。尺八のイメージを崩そうと思ってやってきました」と語る。

 クラシックやロック、ジャズなど気に入ったジャンルの曲しか聴かないという人は少なくない。「だからこそいろいろなジャンルに尺八の音をちりばめて、まずは耳にしてもらう機会を増やそうと思いました。尺八はこんな音も表現できるのかと知ってほしかった」

 さまざまな音楽を経験したことで、自身も古典への理解が深まったという。「活動が広がりすぎて収拾がつかなくなりつつある。今までは何でもやってきたけどこれからは道山ならではという部分を深めていきたい」と新たな目標を掲げる。

 演奏会では作曲家の藤倉大に委嘱した「ころころ〜独奏尺八のための」が初演される。「ころころ」は尺八の技法で、転がるような味わい深い音がする。英国在住の藤倉が藤原とインターネットによる映像・音声通話「スカイプ」でやりとりをしながら作った。

 藤原の師匠で14年に死去した人間国宝の山本邦山作曲「竹の群像」は9人で演奏する。「尺八の合奏は近い音をぶつけて不協和音的な音色を奏でる。分厚くて豊潤な響きを味わってほしい」

 3月26日(土)午後4時開演。問い合わせ いずみホール(06-6944-1188)

新春彩る古典芸能の調べと舞 31日、名古屋能楽堂

朝日新聞デジタル
古典芸能の継承者が集って正月のご祝儀曲などを披露する「新春を寿(ことほ)ぐ 邦楽と舞踊」が31日、名古屋・三の丸の名古屋能楽堂で開かれる。箏や尺八、三味線、笛、舞踊などで研鑽(けんさん)を積む東西の若手やベテランが登場する。

 長唄「松の緑」で始まり、四季の風物を詠み込む「吾妻八景」、舞踊「名寄の寿」「梅の栄」で新春の風情を描く。尺八の野村幹人(名古屋)や箏の萩岡未貴、中島裕康ら20代〜30代実力派の独演や、人形浄瑠璃文楽座(大阪)の太夫と鶴澤寛太郎ら三味線で牛若丸と弁慶の出会いを描く「五条橋」など。出演はほかに清元美治郎、吉住小三代、清元清美太夫ら。芸能の未来を語る座談もある。

 企画した市川櫻香は「若い人も自分より下の世代が少なく、古典が消えてしまうのではないかと不安を抱いている。職業として本気で芸を追求する姿を多くの人に見てほしい」と話す。

 午後1時半開演(終演5時半)。全席自由3千円。小中生千円。切符購入は 電話 052・231・0088(能楽堂)または052・323・4499(日本の伝統文化をつなぐ実行委員会)。


「若手邦楽家の発掘」 利根英法コンの最優秀賞決まる

東京新聞
2011年に29歳で早世した箏曲家の利根英法(ひでのり)さんの遺族が「若手邦楽家の発掘、登竜門に」と願って創設した「第二回利根英法記念邦楽コンクール」(コンクール実行委員会主催)が東京都内で開かれた。


 中学生までの部には四組十八人が参加し、中学一年の鹿野竜靖君と小学四年の早瀬大和君の組が、一般の部には十三組三十一人が参加し、中島裕康さん(27)と黒田鈴尊さん(32)さんの組がそれぞれ最優秀賞に輝いた。一般社団法人利根英法基金=(電)090・4286・4658=では賛助会員を募集している。

東京新聞
長唄三味線方として多大な貢献をした故中島勝祐(かつすけ)を記念して設立された「中島勝祐創作賞」(日本伝統文化振興財団主催)の第四回受賞作品に、東音赤星喜康(とうおんあかほしよしやす)(55)作曲の「文京坂名所踊図(ぶんきょうのさかめいしょおどりえ)〜坂悠々(坂八景)〜」が選ばれた。
 同賞は邦楽の優れた創作曲が対象。長唄の作品が受賞するのは初めて。赤星は「中島先生とは一緒に仕事もし、多くのことを教えていただいた。それだけに受賞はうれしい」と喜びをかみしめている。
 今回は応募作品が過去最多の十四曲あり、京都市立芸術大学の久保田敏子名誉教授ら七人の審査委員の最高得点を集めたのが「文京坂名所踊図」。同曲は二〇〇九年に東京都文京区の日本舞踊普及会からの委嘱で作曲した。かずはじめ氏の詞には同区の坂や生活文化が織り込まれている。
 「古典をベースに新しいものを作ろうとして出来上がったのがこの作品。作曲は東京芸術大学時代から始め、これまで三十曲以上。これからも続けていきたい」と赤星。
 贈呈式と記念演奏会は七月七日午後六時から東京・三越劇場で開かれる。観覧希望者は日本伝統文化振興財団=ファクス03・3222・1118=へ。入場無料。 

新潟日報モア)
7月26日、8月2日 新潟・中央区

 今年で結成20年目となる新潟市ジュニア邦楽合奏団が、7月26日に新潟市中央区の市音楽文化会館で定期演奏会を行います。また8月2日にはジュニア邦楽合奏フェスティバル2015 in NIIGATAと題して同区の新潟市民芸術文化会館りゅーとぴあ コンサートホール)で東京都(音輪会)と静岡県浜松市の(浜松ジュニア・ユース邦楽合奏団)との交流演奏会を開催する。

 ジュニア邦楽合奏団は、小学生から高校生が所属。箏(こと)と三味線、尺八を演奏する全国的にも珍しい合奏団だ。両演奏会ではオリジナル曲などを披露する。

 8月の交流演奏会では、合奏団と交流がある東京都の子ども邦楽合奏団音輪会、静岡県の浜松ジュニア・ユース邦楽合奏団が出演。それぞれ団体の演奏のほか、3団体メンバーによる合同演奏を行う。

 ともに午後2時開演。定期演奏会は入場無料だが整理券が必要。交流演奏会は全席自由で500円。問い合わせはりゅーとぴあ事業企画部、025(224)7000。


新潟市ジュニア邦楽合奏団


浜松ジュニア・ユース邦楽合奏団


音輪会

産経新聞
2020年の東京五輪パラリンピックの開催を日本の伝統的な楽器「和楽器」の魅力を伝える好機と受け止める人がいる。“邦楽界のプリンス”と称されるソロデビュー15周年の尺八奏者、藤原道山(42)と三味線プレーヤー、上妻(あがつま)宏光(41)だ。2人に東京五輪に向けた思いと和楽器の魅力を聞いた。


≪尺八・藤原道山
 ■大切なのは四季の移ろい
東京五輪の開催に向けて和楽器が注目されているように感じます。これは和楽器を知ってもらう好機。日本人にも、もっと和楽器の存在を知らせたい」
 こう語る藤原が愛用している尺八の指穴は5つだけだ。それでも首や指、息の使い方を工夫すると、「さまざまなニュアンスを作ることができる。同じ音は二度と出せないけれど、無限に音を奏でられる。尺八は表現力が多彩。作りはシンプルですが、言葉に近い音色が出せる」と言う。
 日本の特色を生かし、四季を意識した曲の演奏にも取り組んでいる。最新アルバム「季(TOKI)−夏−」(日本コロムビア)には「古今和歌集」を引用した曲「夏の曲」など夏に関連する4曲を収録した。「和歌などの日本文化は四季がベースになっている。四季の移ろいを大事にするのが日本人ということを忘れないでいてほしい、と思いました」邦楽界に新風も巻き起こす。8月24日には、東京・赤坂のサントリーホールで世界的指揮者、山田和樹(36)が率いるオーケストラ「横浜シンフォニエッタ」などと共演する。「和楽器とオーケストラの融合により、新たな音楽が生まれると思います」と力強く語った。

「尺八は奏者の思いが、そのまま伝わる楽器」と語る藤原道山


≪三味線・上妻宏光
 ■伝統を複合的に盛り上げ
東京五輪を機に、邦楽だけでなく、歌舞伎や能など複合的に伝統の世界が盛り上がればよいと思う」
 こう語る上妻は近年、歌舞伎俳優、市川海老蔵(37)が出演する舞台の音楽に取り組む。最新アルバム「伝統と革新−起−」(日本コロムビア)には市川の自主公演「ABKAI 2014」で使用した曲「大蛇(おろち)〜ABKAI〜」などを収録した。制作側からは、観客の「反応が良かった、と言われた。異物が入る良さがあったようです」。
 歌舞伎の伴奏音楽として発展してきた長唄三味線は繊細なメロディーを演奏するのに適する。一方、上妻が弾く津軽三味線は「弦楽器でありながら打楽器のような強さと音色、ビート感が出せる。スタイルが異なる長唄三味線の奏者が快く対応してくれたので歌舞伎の舞台で一緒にできた」。
 「伝統と革新」をテーマに掲げ、10都市を巡るツアー「生一丁!」が7月3日から始まる。一方、8月29日に東京・渋谷公会堂で行う特別公演には歌舞伎俳優の市川猿之助(39)らが出演する予定だ。
 日本文化は共通して「独特の『間』」があるという。「邦楽の『無』の響きは、水墨画の『余白』の美しさに似ている。『間』の感覚は日本語で話すときに身につけていると思う」

「弾いていると自分のくせに合うのが三味線」と語る上妻宏光 

長野日報
諏訪邦楽子ども教室(中島昌之代表)が、27日から11月まで6回にわたって開く2015年度文化庁伝統文化親子教室事業「邦楽『琴』子ども教室」(諏訪市教育委員会共催)を募集したところ、定員15人に対し、諏訪地方から6倍を超える94人(子ども60人、大人34人)の申し込みがあった。「予想以上」の盛況ぶりに急きょ会場を変更して応募者全員を受け入れることにした。

 教室は琴を通して感性を磨き情操を豊かにすることを目的に、実技、歴史などを学ぶ。応募者のうち小学生は50人、中学生は10人で全学年にわたっている。市町村別では茅野市24人、諏訪市21人、岡谷市11人、下諏訪町4人。3グループに分けて行う。

 諏訪市豊田小学校多目的室を会場に毎月1回開き、最終の11月28日には成果を発表する。希望者は8月2日諏訪三曲主催の「子どもの集い」、11月1日の同市文化祭に参加する。

 講師は三曲協会指導者の勝田雅楽澄(うたすみ)さん、藤森通子さん、新村雅久躬(まさくみ)さんら6人。まず琴に触れて音を出すことから始め、練習曲「糸車」に取り組む。楽器の特徴や歴史などの座学を交え、「桜」「荒城の月」などにも挑戦する。

 中島代表によると、申し込みは短期間で定員となり、その後も「何とかならないか」という声が相次ぎ、関係者の理解で急きょ受け入れ枠を広げたという。

 受講日は当初の1日1回から3回に増やし、会場をカルチャーホームすわから移した。琴も予定の2倍余の33面、象牙の爪は94組を用意している。

 「予想以上の人たちが興味を持っていることを改めて知り、驚いた。うれしくありがたいことなので、出来る限り対応させてもらう」と話し、琴の張りを調節、張り変えなどの準備を進めている。