琴の魅力 日本人を体現 グラミー賞受賞の松山さん

今年2月、大阪狭山市出身の琴演奏者、松山夕貴子さん(49)が、米国音楽界で最高の栄誉とされるグラミー賞を受賞した。日本の伝統和楽器の音色が海外であらためて評価された形だ。ロサンゼルスに住み、和洋を問わず幅広い音楽のジャンルに挑戦し続ける松山さんに、琴の魅力や可能性について聞いた。 

−受賞式にも参加されていましたが、受賞後の心境をお聞かせください。

 「レッドカーペットや壇上でスピーチした時はものすごく緊張しましたが、その後は正直ピンときていませんでした。日本の友人のお祝いメッセージや取材などを受けているうちに実感が湧いてきました」

 −世界的なサックス奏者、ポール・ウィンターさんのアルバムに参加しての受賞です。何が評価されたとお感じですか。

 「私自身というより、やはりポール・ウィンターさんが素晴らしいんだと思います。ご本人の音楽、常に愛を感じます。ご家族の皆さんがそもそも、人にも物にも自然にも、愛を持って接する方々なのです。そんなポールさんの気持ちを音にしてみようと思ったこと、そこを評価されたとしたらうれしいですね」

 −琴の音色はどのように受け止められたのでしょうか。

 「ロサンゼルスでは、琴の音はハープに似て『ジャパニーズハープ』とも言われています。でも、音楽の間の取り方や欧米の音楽にはない音色は、日本人そのものだと思っている人も多いですよ。奥ゆかしさとか、品とか。良いように言い過ぎかな?」

 −琴だからこそ表現できる音楽性についてどのようにお考えですか。

 「日本人が持つ奥ゆかしさとかプライドとかが音に表わされていると思います。ただ、それだけではなく、欧米の音楽とも融合させた新しい音楽も創造していけると思っています」

 −大阪では、伝統工芸品の大阪三味線の作り手が存亡の機に立たされるなど、国内で和楽器は一般的に広まっていません。今後の行く末をどのようにお感じですか。

 「正直、これからまた琴ブームが来るかどうかはわかりませんが、逆に、どこに行っても琴の音が聴こえるというのも変な気がします。たまに癒やされたいと思っているときにスッと琴が流れている、そんなのもいいですね。もちろん日本人だけではなくインターナショナルに」

 −今後の活動の抱負をお聞かせください。

 「ライブをすると、ミュージシャンの兄との波長が一番合い、この秋からの日本ツアーは彼と回る予定です。やはり愛を伝えていきたいです」

 プロフィール 母の勧めで9歳から琴を始め、24歳で師範免許を取得。この間、ミュージシャンの兄の影響で洋楽にも傾倒する。30歳で渡米後、和洋折衷の幅広い音楽活動を展開。ポール・ウィンターさんのアルバム「ミホ ジャーニー・トゥー・ザ・マウンテン」にソロ演奏やアンサンブルで参加し、グラミー賞の最優秀ニューエイジアルバム賞を受賞した。


琴の演奏を通して「愛を伝えていきたい」と話す松山さん

大阪日日新聞より