奄美の島唄、HPに収録「若い人へ発信・継承したい」

アップした音源は300を超える。鹿児島・奄美群島の民謡「島唄」が聴けるホームページ「ラジオ喜界島」を主宰するのは、島でサトウキビ農園「道の島農園」を営む村山裕嗣(ひろつぐ)さん(61)だ。

 喜界島の民謡名人が歌う島唄を中心に、収録・発信を続けて9年。奄美伝統の「八月踊り」や、島であった行事や講演会も、画像や動画とともにアップしている。仕事の合間を見つけては島内各地に出かけ、パソコンにつないだアンプで収録してきた。自宅台所の一角でAV機器を駆使し編集作業をする。

 高校生の時に島唄に魅了され、カセットテープに録音してきた。進学・就職で東京に出ていたが1977年に帰郷しサトウキビの栽培を始めた。今は30アールのサトウキビ畑のほか、バナナや島ミカンも育てる。

 農業に精を出しながら島唄を聴いてきたが、90年代に入り、だんだんと昔ながらの島唄を歌える人が減ってきていることに焦燥感を覚えた。

 「誰かがやらないと島唄が聴けなくなってしまう」と独学でパソコンを学び、島唄の収録に乗り出した。電話回線しかなく、島でパソコンをいじる人が誰もいない時期だった。

 島唄を収録していて思ったのは、島唄の多様さだった。曲は同じでも、歌い手により節回しが異なり、歌詞も様々。奥深さに改めて魅了された。

 ホームページは2002年に立ち上げた。「ラジオのように誰でも聴けるウェブサイトにしたい。島唄を発信して若い人へ継承したい」という思いで、ラジオ喜界島と名付けた。

 最近力を入れているのが、演奏会用でない原型に近い島唄の収録だ。最近も島民の家庭におじゃまし、祝いの席で自然に歌われる「歌掛け」を録音した。

 「島唄を聴くと血潮が騒ぐ。年取ってからなおさらそうなんだ」

 パソコンを操作しながら島唄に聴き入り、至福の表情を浮かべた。


自宅台所の隅にしつらえた編集室で
パソコンを操作する村山裕嗣さん=喜界町川嶺
yomiuri.comより