県内の養蚕と滋賀・京都の邦楽器がスクラム 外国産に対抗

安価な外国産繭(まゆ)に対抗しようと、県内の養蚕農家と滋賀県京都府の邦楽器糸製造業者らがスクラムを組む。三味線などの弦の原料となる生糸に、県内で生産された繭を独占的に使ってもらう仕組み。29日には関係者が滋賀県長浜市に集まり、協定を結んだ。

 急激に進む養蚕農家の減少に歯止めを掛けようと、大日本蚕糸会(東京都)が2008年度から進める「提携支援システム」の一環。全国の養蚕農家と製糸、織物、流通の各団体がグループを組み、養蚕から絹製品の製造までをすべて国内で行って高付加価値を付けることで、海外製品との差別化を図る。

 国はこれまで養蚕農家に対し、輸入繭から徴収した調整金を補てんすることで、10倍近い価格差を調整してきた。しかし、目立った効果はなく、調整金に税金を充てることもあったため、本年度限りで従来の制度を打ち切る。繭代補てんがなければ農家は赤字覚悟で生産を続けなければならず、安定した経営を続けるためには、本年度内に提携グループを組む必要があった。

 楽器糸の出来は、加工までの繭の鮮度がかぎ。岐阜の繭は質が良く、滋賀まで運送に時間がかからないため、協定話が進んだ。

 グループは、岐阜県蚕糸協会の農家20戸が、長浜市の邦楽器弦製造「丸三ハシモト」らとつくる「邦楽器糸用特殊生糸を守る会」と、京都市の同「鳥羽屋」らとつくる「絹で奏でる音世界グループ」の二つ。春、夏、秋と3回ある繭の収穫期のうち、質の高い春の繭1200キロの出荷を見込む。調印式には各社、団体の代表者ら10人が出席し協定書に押印。同協会の臼井利太専務理事(63)は「岐阜県産繭の生産量と質の維持に努めたい」と話し、丸三ハシモトの橋本圭祐社長(64)は「海外産で高品質な生糸の入手は困難。何としても国内産を供給してもらいたい」と期待を込めた。


協定を結び、手を取り合う県蚕糸協会の臼井専務理事(右から3人目)ら=滋賀県長浜市

中日新聞より