伝統文化ポーラ賞

「地道に活動を続けてきた人々にスポット」

 日本の伝統文化を継承し、発展に貢献した人や団体を顕彰する「伝統文化ポーラ賞」。31回目の今年は優秀賞に博多人形の中村信喬(しんきょう)さん(54)と舞台美術の有賀二郎さん(78)、奨励賞に人形浄瑠璃文楽の三味線弾き、鶴沢藤蔵(つるざわ・とうぞう)さん(46)ら計3つの賞に8件が選ばれた。

 「(伝統文化の)隅々まで目が届いた賞をいただき幸せです」。ローマでの個展開催で欠席した中村さんに代わり、有賀さんが受賞者を代表して喜びを語った。その言葉通り、地域賞では大阪の菅(すげ)細工や茨城の漆(うるし)掻(か)き技術、富山の砺波(となみ)子供歌舞伎など地道に活動を続けてきた各地の人々にスポットが当てられている。

 効率が幅を利かせる現代にあって、日本の歴史や風土に育まれた伝統文化は時間をかけ、丁寧に受け継がれる。受賞者は皆、一筋に技術や芸を磨いてきた。

 中村さんは3代続く人形師の家に生まれ、家業を継いで31年目。有賀さんは東京芸大在学中から60年以上、演劇や舞踊の美術制作を続けてきた。藤蔵さんも曽祖父、七代目竹本源大夫(げんだゆう)から4代続く文楽の家に生まれ、小学生の時から三味線の撥(ばち)を握っている。
言葉少なく謙虚に語る受賞者より、その作品や演奏の方が“饒舌(じょうぜつ)”だ。会場には、精緻で華やかな中村さんの人形や菅細工の笠(かさ)が飾られ、藤蔵さんは浄瑠璃語りの豊竹呂勢大夫(ろせたゆう)さん(45)の助演を得て、初春の義太夫「万歳(まんざい)」を披露し、参加者らを魅了した。

 藤蔵さんは、父で人間国宝の九代目源大夫さん(79)とともに今年、それぞれの祖父の名跡を同時襲名したばかり。「藤蔵の名で初めて賞をいただき、おじいさん孝行になりました。最近は『おじいさんに音が似てきた』と言われます」

産経ニュースより